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スタッフブログ | Staff Blog

【地域連携】「こどものアトリエTutti」さんにインタビューしました

「アートを通して⼈も地域も元気にしたい」|ART-IST アトリエTutti ⻄郷絵海さん

PAL@TUFSがある府中市には、さまざまな想いを持って地域で活動する人がたくさんいます。今回ご紹介するのは、2023年9月に開催された 【PAL国際保育園@東京外大1周年イベント】いとなみPALフェスタ〜いままでとこれから〜 や外語祭にも参加してくれた、「 ART-IST アトリエTutti(トゥッティ) 」。Tuttiではさまざまな素材を使って、自由にアートを楽しむことができます。Tuttiが大切にしていること、地域での活動、今後挑戦したいことについて、主宰者の西郷絵海(さいごうえみ)さんにお話を聞きました。

ありのままの自分でいられる場所を目指して

元々は中学・高校の美術教師をしていた西郷さん。しかし言われるままに課題に取り組む生徒たちの姿を見て、次第に違和感を持つようになったと言います。
「当時、学校の美術の授業では決められた道具を使って決められたものを描く、ということがほとんど。もっと自由に創作を楽しんでもらいたいという思いが常にありました。」


そこで国内外の美術に関するワークショップや取り組みを調べる中で出会ったのが、末永蒼生さんが主宰する 「 子どものアトリエ・アートランド 」 。アートランドでは子どもたちに自由な創作の場を与え、五感や表現力、個性や想像力を育んでいます。また、色彩や画材から子どもの心を読み解く、カウンセリングとアートセラピーを融合させた「末永ハート&カラー・メソッド」を展開。子どもたちの作品から現在の状態を読み解き、親御様に伝え、子育てのヒントやメンタルケアに役立ててもらっています。

西郷さんは末永さんの元で「末永メソッド」を学びながら、インストラクターの経験も経て、2010年に府中市で自宅兼アトリエとしてTuttiを開設しました。


「Tuttiでの過ごし方は自由。子どもたちはTuttiにやってくると、今日は何しようかな、と思い思い、好きに創作を始めます。時には『何も作らない日』があってもOK。絵を描かなくても、創作をしなくても、ゴロゴロして過ごすだけでも大丈夫です。Tuttiとはイタリア語で『みんな』という意味。子どもも大人も、ここに来たら自分のままでいられる、安心して自分を出せる。そんな場所を目指して、Tuttiという名前をつけました。」
特徴的なのは、3歳児から小・中学生までが同じクラスに参加していること。年齢の離れた子どもたちが集まっていても、互いに干渉せず、それぞれが自由に過ごしているそうです。
小さい子がつまづいていると、大きい子が自然と手伝ったりすることも。小さい子が大きい子の創作を見て同じことに挑戦してみたり、小さい子が粘土と水をぐちゃぐちゃにしているのを見て、大きい子が一緒に混ざっているような場面もあるといいます。互いに尊重し、時に影響し合うことで、子どもたちには自然と社会性や自己肯定感が育まれていくのだと西郷さんは話します。


またTuttiが寄り添うのは子どもたちだけではありません。大人を対象としたクラスも開講しています。大人の参加者は末永メソッドを用い、なぜこの色を使ったのか、なぜこの形にしたのかといった問いかけや対話を通して、自分の心の状態に気づくことができます。

Tuttiは学校でも家でもない、第三の居場所

西郷さんがTuttiで子どもたちと向き合う上で何よりも大事にしているのは「正直でいること」。
「Tuttiに来る子たちは特に感性が豊かなので、取り繕ってもすぐに見抜かれてしまいます。

だからできるだけ正直でいるようにしています。良いものには良い、嫌なものには嫌だと、できるだけ対等な立場で正直に伝えることにしています。」
子どもたちの中には、どこまで自由が許されるのか、試すような行動を取る子もいるといいます。パレットをひっくり返され、そこらじゅうを水浸しにされたことも。西郷さんは内心「やめて〜!」と思いながらも、涼しい顔でそれを見守ったそう。そうすることで、子どもにはここが本当に自由にいられる場所なんだということが伝わるからです。


ある時西郷さんが子どもたちに、「Tuttiってどんな場所?」と聞いたところ、返ってきた答えは「学校でも家でもなくて、自分の好きなことに集中できる場所」。「学校だと友達や先生の目があり、家でも宿題や親・兄弟の存在があって、本当に自分の好きなことだけに集中できる環境というのは意外とありません。Tuttiはそんな子どもたちにとって、どこよりも自由で安全にいられる場所であれたら嬉しいです。」

西郷さんがアート活動をする上で大切にしていることの1つに「子どもたちに『本物』に触れる機会をたくさん与えること」があります。
「子どもに魚の絵を描かせたら切り身が泳いでる絵だった、という話がありますが、我が子を含め、子どもには出来るだけ本物に触れ、たくさんの世界を知ってもらいたい、と思っています。テレビで見るドラマより、劇場で生の舞台を見た方が、役者の息遣いまで聞こえてくる。そうした『本物』や『プロ』に多く触れることで、より感性が育まれると思うからです。」

過去には埼玉県にある絵の具メーカー「クサカベ」の工場にtuttiの生徒たちを連れて行ったことも。子どもたちは油絵具の匂いに驚いたり、絵の具が混ぜられている様子を見入ったり、自分達で実際にオリジナルの絵の具を作らせてもらったりと、普段何気なく使っている絵の具について、体験しながら学ぶことができました。

目指しているのは地域の「居場所」が増えること

西郷さんがPALと出会ったのは、多磨駅で開催された、地域プレイヤーが集まるイベント「たまいまマルシェ」で互いに出店者として参加していたことがきっかけでした。
「PALは地域に根ざしながら、府中を盛り上げたいという思いを持っていることに何よりも共感しました。実際にPALを訪れて驚いたのが、とても国際色豊かなこと。その日は給食がウズベキスタン料理だったのでびっくりしてしまいました。グローバルな環境、広々とした園庭で伸び伸びと過ごす子どもたちを見て、素敵な場所だな、と思いました。」
その後、PALの1周年イベントや外語祭にもワークショップ出店してくれたTuttiさん。今後は「PALの自然豊かな園庭を使って、泥を使った泥染や、葉っぱや土を使って絵を描いたり、大きなキャンバスを広げて全身絵の具だらけになって描いてみたり。大勢の子どもたちが参加するダイナミックなアートイベントをやってみたいです」と話してくれました。


「Tuttiは地域の中で子どもたちが行くことの出来る居場所の一つ。けれど私たちの力だけでは足りないので、地域の中にそうした拠点がいくつも増えればいいな、と考えています。大人同士が連携しつつ、子どもたちが行きたい場所を選べるように。PALとTuttiはそんな拠点同士の関係になれたら理想的だなと考えています。」
西郷さんはTuttiの他にも東京都府中市を中心とした、アートに関わる人々やアートファンのネットワーク「 NPO法人アーティスト・コレクティヴ・フチュウ 」の活動をしており、アートで府中をおもしろい街に盛り上げる取り組みを行っています。

活動の1つとして、2018年に開催された、府中市内約40箇所の拠点をめぐるアートフェスティバル「フェット FUCHU」を、コロナ禍を経て6年ぶりに府中芸術祭「The ART Fuchu」として2024年に開催し、「アート」を通して地域内のさらなる居場所づくりにも取りみます。

府中にはさまざまなバックグラウンドを持つ⼈が数多く集まっています。江⼾時代から続く伝統的な家業を継いでいる⼈もいれば、⻄郷さんのように結婚を機に府中に移り住んできた⼈も。「それぞれがそれぞれの活動で地域を盛り上げようとしている。そんな取り組みが市内のあちこちにあるのが府中の⾯⽩さだと思います」と⻄郷さん。
そんな⼈たちと連携し、⼦どもたちの居場所となる拠点を増やしていくことを⻄郷さんは⽬指しています。
「イベントを通して、Tuttiに通っている⼦や卒業した⼦たちがスタッフとして活躍できる場づくりも今後はしていきたいですね。彼らの⼒を借りながら、もっともっと、⼦どもにも⼤⼈にも⾨⼾を広げ、Tuttiのような「⾃分の好きなことに集中できる場所」を増やしていきたいです。」