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スタッフブログ | Staff Blog

【地域連携】「ゴハンとオカズ。ときどき」さんにインタビューしました

「美味しいご飯は“繋がり”の基本」「ゴハンとオカズ。ときどき」小幡奈央さん

緑に囲まれて穏やかな風が吹くスタジアム通り沿い、PAL@TUFSでは今日も様々なバックグラウンドを持つ子どもたちが元気に過ごしています。今回ご紹介するのは多磨駅から徒歩約3分、大通りから1本入った裏路地にあるお弁当・お惣菜屋「ゴハンとオカズ。ときどき」さん。この土地で開業した理由、お店のこだわりや特徴、そしてPALとの関わりについて、ご自身のお子さんもPALに通わせていたという店主の小幡奈央(おばたなお)さんにお話を伺いました。

接客業、店長、調理師の経験。念願の開業に至るまで

「子どもの頃から人と関わることや料理が好きで、20代になってからは、いつか自分のお店を持つんだろうなという予感がしていたんです」

もちろん作るだけではなく食べることも大好きですよ、と小幡さん。短大を卒業後、飲食店やアパレル、本屋などで接客の経験を積む中で「食を軸に人が集まるコミュニティーを作りたい」という思いが芽生えました。

それから20代後半でカフェカンパニーに就職し、新店舗の立ち上げ店長という役割を担うようになります。毎日を忙しく過ごしていた小幡さんの転機となったのは、結婚と出産でした。飲食業界では、お客さんが絶え間なく入れ替わり、食材管理や衛生環境に注意を払い続けなければいけないため、人員の確保が非常に重要な課題です。しかし出産してからは仕事中心というわけにもいきません。あくまでも子どもとの生活を大切にしたいと思っていた小幡さんは、これからの自分の人生について改めて考えるようになりました。

「でも働くのが好きだったんですよね。子育ても頑張りたいけれど、仕事を辞めるという選択肢はなくて」

時期はちょうどコロナ禍。激務が続き経営も不安定になった飲食業界を辞め、定時で退勤できる安定した職を探しているうちに見つけた仕事が保育園の調理師でした。

「大量調理や野菜をたっぷり使った素材の味を生かす調理方法を学ぶことができ、子どもの反応を見ながら工夫するのはとても楽しかったです。だけど自分の中にずっとあった「食を通していろんな人と出会い、いろんな繋がりを作る」という思いとはやっぱり離れた職場で、少し物足りなくなってしまったんです」

そこで始めたのが、JR中央線東小金井駅近くにあるシェアキッチンの利用でした。自分の好きなタイミングで出店できる場所があることを知り、惣菜やおにぎりの販売を行い始めたのが「ゴハンとオカズ。ときどき」の原点です。平日は毎日定時まで働き、土日になるとシェアキッチンに赴く。週7日間休みなく動き回っていました、と忙しかった日々を振り返ります。

半年ほどこの生活を続けたのち、ついにお店を構えるという長年の夢が実現に向けて動き出しました。

「私、西武多摩川線が好きなんですよ。良い意味で東京っぽくないというか、小さな電車が自然の中を走っていく感じがエモいというか。それがここでお店を開きたかった理由の1つです。また、この場所は府中にある自宅から近く、かつ東小金井のシェアキッチン時代に出会ったお客様も足を運びやすい場所という条件にもぴったりでした。」

ここだ!と思える土地を見つけても、飲食店の営業が可能な物件探しには相当苦労しました。やっとの思いで見つけた今のこの物件、どうしてもここにお店を構えたいという熱い思いから、大家さんに直筆で手紙を書いて借りることに成功しました。

「美味しい!」を届けるこだわり

「ゴハンとオカズ。ときどき」のお米は山形産はえぬきを使用し、羽釜を使ってふっくらと炊き上げます。羽釜は持ち運びが楽なこともありシェアキッチンやイベントでも大活躍したそう。友人の伝手で紹介してもらったイトー農場さんよりお米を仕入れ、注文してから精米を行うため常に新鮮な状態で手元に届きます。玄米も混ぜることでプチプチした食感も楽しむことができるこだわりのゴハンです。

お惣菜は、親しみやすく素朴であること・彩り豊かであることを念頭に考えられています。旬の食材や近くの農園で栽培される珍しい野菜などを仕入れ、お客さんが安心して楽しく召し上がっていただけるようなお惣菜づくりを心掛けているとのこと。また、撮影ロケの多い府中市はお弁当の需要が高い土地でもあります。小幡さんのお店では、お客さんの予算と希望するメインのオカズに合わせておまかせでお弁当を作っています。

「最大で1日に160食のお弁当を作ったこともあります。さすがに大変でしたがそれを乗り越えることができたのは良い経験になりました。それに、私はお弁当を詰めるのが好きなんです。決められた枠組みの中で彩りよくバランスよく組み立てていく、“小さな世界”っていう感じがしませんか?開けたときにわっ!と喜びの声が湧くようなお弁当を作ることが目標です」

多様性を日常に

小幡さんがPALのことを知ったのは調布経済新聞の記事がきっかけでした。2022年9月に開園したPALは、0歳児から小学校6年生までの子どもが利用できるインターナショナルスクールです。小幡さんが当時小学校1年生だった息子さんを学童利用で通わせることにした背景には、今の時代で子育てをするうえでのある思いがありました。

「小1、もっと幼い頃から英会話教室に通っている子もいますが、私は息子にバリバリ英語教育をさせるという考えはなくて。でも、息子には幼いうちから英語や他の国の言葉にたくさん触れて、多様性に溢れる世界に慣れてほしいという思いはあったんです。英語だけを特別に教えるのではなく、『色々な国の子たちと一緒に過ごすのが当たり前』だと思ってもらえる環境で育てられたらいいな、と考えていた私にとってPALさんは理想的な場所でした」

青森県で生まれ育った小幡さん。時代や土地柄もあり、「多様性」という言葉からはかけ離れた幼少期を送りました。

「私が子どもの頃は海外の人を見るとちょっとドキッとして、話しかけていいのかなと不安に思うこともありました。でも息子は、ルーツを持つ国や使う言葉が違う人が周りにいてもそれが当然のように思っていて、全く動じている様子はないんですよね。今まで保育園という場所が彼の世界の全てだったとしたら、小学生になって、色々なバックグラウンドを持った子どもたちが集まるPALに通い始めたのはちょうどよいタイミングだったのではないかと思います」

息子さんとたくさん遊んでくれたというアメリカ人の先生。「息子は頑なに日本語で、先生は英語で話すんですけど、コミュニケーションはとれているっぽいんです」と笑う小幡さん。年齢、言語、国籍…様々な違いはあっても、PALという場所では違いに関わらず互いを受け入れ合う人間関係の築き方を学ぶことができます。

PALは、定期的にイベントを企画し他の施設とも連携をとりながら、コミュニティーの基盤として地域に根差した場所を目指しています。

「食を通してコミュニティーを作りたいという思いが私の全ての出発点です。地域貢献という点でPALさんの活動と共通する部分もあるのではないでしょうか。もし今後面白いイベントがあれば是非協力して地域を盛り上げていきたいと思っています」

インタビュー・編集:堀 詩(東京外国語大学・英語科2年生)
写真:荒井英美(東京外国語大学・フランス語科4年生)

堀 詩
東京外国語大学・英語科2年生の堀詩と申します。2024年2月より「詩の小箱」というホームページを開設し、日々難解な英語と戦いながらもライター活動に精を出しています。旅行や読書、周囲の方々とのコミュニケーションなどを通して新しい世界を知ることが私の日々の楽しみです。リズムよく丁寧な言葉を使い、文章という形で皆様にわくわくするような体験をお届けしたいと考えています。最近のマイブームはベリーダンスと自炊。

https://utanokobako.com/portfolio/

荒井英美
東京外国語大学・フランス語科の荒井英美です。4年次にパリの写真学校に1年間留学し、ルポルタージュとドキュメンタリー写真/映像を学びました。好きなことは弓道と花。和菓子に目がない。

https://emiarai.photos/